SXSW2019 における技術トレンドの探報

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<SXSW とは>

2019 年 3 ⽉ 8 ⽇〜18 ⽇にアメリカ、オースティンで開催された SXSW2019 に参加してきました。SXSW は毎年 3 ⽉に⾏なわれる、⾳楽祭・映画祭にテクノロジーなどを組み合わせた複合的・⼤規模イベントです。
街全体が展⽰会場になっていて、テクノロジー展⽰に触れながら、映画祭や⾳楽祭に参加できるなど、他のテック系イベントと⽐べ開放的な雰囲気が漂います。SXSW を通じて Twitter 社や Airbnb 社がブレイクしたことをきっかけに有名になり、現在では多くの企業やベンチャーが現地で展⽰や発表を⾏います。テクノロジーの展⽰はインタラクティブと呼ばれ、新しい事業アイデアや創造的な技術を持つ、新興企業のイベントとなっています。

SXSW の舞台となっているオースティンは「Stay Weird = 特別でいよう」を掲げており、開放的な雰囲気があります。SXSW の時期には毎年有名なアーティストが訪れます。それ故か、他の展⽰会に⽐べて、固定概念にとらわれない⾃由な発想で先進的な取り組みが集まる印象があります。今回は SXSW2019 に参加し様々なプロトタイプやプロジェクトに触れ、世界の技術動向を探ってきました。

 

<SXSW の舞台>

SXSW の展⽰の中⼼はダウンタウンにあるコンベンションセンターですが、コンベンショ ンセンター周辺のホテルやブースなどで様々なテーマに関して講演が⾏われます。また、企 業が周辺のレストランや⼀⼾建てを貸し切って活動を紹介したり空き地にデモ施設を作っ てデモを⾏ったりと町全体が SXSW 会場になっています。あちこちで投資家にむけたピッ チプレゼンも開催されています。 公演やパネルディスカッション、デモやピッチコンテストなど、映画・⾳楽のイベントと合 わせると 2000 以上のコンテンツがあります。SXSW を味わうには、聞きたい効率的に会場 間を移動する必要があります。

<移動⼿段>

今年とても⽬⽴っていたのは、電動キックボードです。Uber や Lyft など数社が電動キック ボードを展開していました。アプリをダウンロードし、⽬の前に⽌めてあるキックボード の QR コードをスキャンしてすぐに乗ることができます。乗り終わる時も、好きな場所に 留めて写真をとってアプリで終了ボタンを押せば完了するので、とても便利でした。とに かく⾄るところにキックボードが⽌めてあるので、バス停やレンタルサイクルを探さなく ても気軽に数キロの移動ができるのでとにかく便利でした。⽇本でも電動キックボードの 普及に向け実証実験が進められていますがまだまだ時間がかかる印象です。安全性の懸念 もありますが、より便利なものがどんどん導⼊されるなど、合理的なものが⽇本よりもス ピーディーに社会に溶け込んでいくところを実際に体験して感じられました。

 

<トレードショー>

世界各国がコンベンションセンターでブース展⽰をしていましたが、とりわけ⽇本ブース に多くの⼈が集まっていたように思います。 主な展⽰企業は電通、SONY、NHK、シチズン、NEC、東芝など、⼤企業が出店していた他、 ベンチャー企業や東京⼤学産学連携が主催する「Todai To Texas」プロジェクトの展⽰が⾒ られました。 どれもユニークな取り組みを紹介しており、技術の応⽤や新しい体験価値を追求するもの が新鮮でした。電通の SUSHI SINGURALITY は新しい概念のプロトタイプを展開し、様々 なところで話題となっていました。トレードショーの詳細については多くの⽅が発信して いるので、今回の報告では詳細は割愛します。

<アワードから⾒る技術トレンド: リアルな課題に対するユニークなソリューション>

SXSW インタラクティブアワードでは、13 のカテゴリーでプロトタイプや活動を表彰しています。(https://www.sxsw.com/awards/interactive-innovation-awards/) その中でも、最も多くの観客に選ばれた「Peopleʼs Choice Award」は「Robotics & Hardware 部⾨」の受賞作の「My Special Aflac Duck™」、「Best In Show」は「Health, Med, & BioTech 部⾨」の受賞作の「Butterfly iQ」でした。

「My Special Aflac Duck」は、さまざまな課題を抱える⼩児がんの⼦どもたちを応援するた めに⽶国で開発されたアヒル型ロボットです。医療関係者や児童⼼理学などの専⾨家のテストを通じてインタラクション機能が実装されていて、⾟い治療や⼊院⽣活に寄り添いま す。 「Butterfly iQ」 は 1 回当たり 250 ドルかかる超⾳波計測を、iPhone とデバイスを⽤いて臨 床品質の検査を⾏う、クラウドストレージサービスです。2000 ドル以下でこのデバイスを 配布できるようにし、多くの⼈が検査を受けられるようにしました。 その他受賞した取り組みについても共通しているのが「誰の何のペインを、どのようなテク ノロジーとアクションで解決したのか」が評価されているように感じます。

<近年から 2020 のアワードカテゴリに⾒る技術トレンド>

SXSW の過去の award プロジェクトと⽐べてみると、未知であった AI や機械学習などの技 術がこなれてきて、テーマや適⽤技術がより具体化した印象です。 では、来年以降はどうなっていくのかという点について、筆者の主観で考察してみました。 2017 年から 2020 年までの award カテゴリを⾒てみると、少し流れが⾒えるように思えま す。 2018 年から続きカテゴリーとなっている「AI & Machine Learning」、名前を変えて登場し た「Climate, Culture and Social Impact」「XR」、2019 から「Robotics & Hardware」「Speculative Design」が加わり、変化が起きています。 これは、AI や機械学習の使いどころが広まり、社会をよりよくしていくことや、⼈と社会が 繋がっていくことへの期待の現れとも読めます。

様々なハードウェアが出てくる中で、近年注⽬を集める Robotics 分野が切り開く未来につ いても世界が期待しているところであるのかと感じます。 また XR は VR/AR/MR の統合した名称として書かれていますが、ハードウェアの⼩型化や ⾼精細化が進む中で、今後の使われ⽅が注⽬されているのかもしれません。 より良い社会を構築するために上記のカテゴリへの期待感が⾼まっているように考えられます。

決して先端的な技術が評価されているわけではなく、何のために技術が使われ、どう変化し たかが問われる⽂脈で⾔えば、アメリカでなくとも、⽇本でも、またどんな国でもその芽が あると思われます。 ⽇本に住むものとしては、改めて、⽇本の中の社会問題にフォーカスすると、世界にも役に ⽴つ、様々なイノベーションの⽷⼝が⾒つかるのではないでしょうか。

<最後に>

SXSW に参加するだけで、展⽰内容だけでなく、実際に町としての賑わいを体験し、様々な イノベーションに触れられた実感を得られました。 イノラボは「オープンイノベーション」を標榜し、様々な社会課題に対して主観的にその事 象を分析し、テクノロジーを基軸にプロトタイピングを進め、より良い社会構築を⽬指して います。SXSW は世界の様々なペインに対してテクノロジーがどのように活⽤されている かをみることができ、今後の活動においてヒントが得られる場でした。 今回の Finding を⽣かしつつ、イノラボは今後もこんな未来があったらいいな、を⽬指して 社会実装を追求していきます。

 

text:岡田敦

 

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